2-1 ゲームマナーと7つの大罪

ボードゲーマーにとって何より大事な財産。それは棚を埋め尽くす貴重で高価なゲームではなく、一緒に卓を楽しんで囲んでくれるゲーム仲間です。

最近流行のソロゲームや、BGA[1]もあるものの、やはりボードゲームの根源的な喜びは一緒に卓を囲む仲間とのコミュニケーションにあると私は思います。

どんなに面白いゲームでも、卓を囲む人次第では酷いゲームになり、どんなゲームバランスが崩れたゲームでもいい人と遊んでいればその崩れ具合を楽しむことすらできます。

その観点でいえば「いいゲーム仲間を見つける」とは、いうなればそれが一つの(究極の)ゲームなのかもしれません。

いい仲間と出会うためには?

自分の気の合う仲間をみつけ、相手にもそのように思ってもらい、定期的にゲームを遊ぶようになるためには、自分からの片思いではなくそのプレイヤーとの両想いになる必要があります。

「カタンの開拓者たち」をデザインしたクラウス・トイバー氏は
『「また明日あなたと遊びたい」と言われるようなプレイで遊びましょう。』
という言葉を残していますが、これは本当にボードゲーマーが何より心に留めなくてはならない名言だと思います。

世間一般では、人は人を
「職業」「資産」「容姿」「地位」
などの即物的なもので判断することが多くあります。

しかし、ことボードゲームの世界では面白いことに上記のようなものは一切関係なく、盤の前に座れば全員が平等です。
その代わりに問われるのがボードゲームマナー。
大げさに言い換えれば「人間力」そのものがボードゲームでは問われます。

「ボードゲームに詳しい」ことより「貴重なゲームをたくさん持っている」ことより[2]、対戦相手に敬意を持ち、全力でボードゲームに取り組み楽しもうとする人こそが、この世界での神です。

マナーを守るとは自分の未来の遊び相手を守ること。
その意識は初心者でも経験が長くなったプレイヤーでも常に持ち続ける必要があると思います。

ボードゲーマー7つの大罪

こと、ボードゲームに関しては「いいマナー」を挙げるよりバッドマナーを挙げるほうがわかりやすいと感じたので、有名な7つの大罪に当てはめてみました。

【傲慢】他者を侮り、思い上がる罪
7つの大罪の中でも私が一番罪が重いと思うのがこの「傲慢」の罪です。ちょっと経験が長いから、ちょっとゲームが上手いから、そういった理由でゲーム自体や対戦相手への敬意を払えないプレイヤーはこの趣味をやる権利がありません。
特に、「非ゲーマー向けのゲーム会主催者」がこれを少しでも出せば、きっと参加者は二度と行きたくないと思います。

【憤怒】怒りの感情をゲーム中に出す罪
gameとは直訳すれば「遊び」です。特に非ゲーマーにとって慣れないボードゲームはやるだけでいっぱいいっぱいの大変な代物。常に気を配ってあげる必要がありますし、怒り出す、不機嫌になるなど論外です。
ゲーマーが抱いていい怒りは不甲斐ない手を打ってしまった自分に対しての怒りだけだと思っておきましょう

【怠惰】全力で勝利を目指さない罪
1つは「集中力の欠如」ゲームが下手であることは罪ではありませんが、卓を囲む以上そこに集中することは一つの義務です。自分のターンになるまで盤面を見ておらず、自分の番になって初めて考え出すことなどはゲーム時間の長時間化にも繋がってしまいます。

【暴食】コンポーネントを汚す罪
ボードゲームは一つの美術品であり工芸品です。値段も決して安いものではないですし、カードなど汚れが付いて見分けられるようになってしまってゲーム性そのものを失ってしまうこともあります。お菓子や飲み物との付き合い方もそうですし、カードの折れや乱暴なシャッフルなどにも注意を払いましょう。

【嫉妬】人の手や運を過度に羨む罪
自分が負けたことを認めたくないのか、たまに明らかに自分の運の悪さを嘆いたり人の強カードに「ズルい」という反応を示す人がいます。カードや戦略の強弱があるゲームは多いものの、多くのゲームでは強い戦略にはリスクもあります。人が上手く行った戦略は参考と賛辞の対象として素直にすごい!と思える心をもつことが大切です

【色欲】盤外の関係性を持ち込む罪
前段でも書きましたが、ボードゲームのいいところの一つは盤の前では全てが平等なところです。それを盤外の関係を持ち込んだようなプレイをしてしまうとその人たちだけでなく場の全員が嫌な思いをすることになります。例えば自分が主催者でかつ先輩などの強い立場にいる場合、そのような余計な配慮がシステム的に起こしにくいようなゲームを選ぶことも重要です。

【強欲】全てのゲームが欲しくなる罪
白状しますが、この罪からは逃れられていません。「対戦相手にいやな思いをさせる」マナーではないのでベクトルは異なりますが、同居している家族にとっては大問題だったりする罪なのであえてここに記載しました。自分やゲーム仲間だけでなく、関わる人全てにいやな思いをさせないことがボードゲーマーにとって重要な心得だと思います。

「怠惰」の大罪の難しさ

ここまで、7つの大罪を紹介してきましたが、その中の一つ「怠惰」の大罪はちょっと要注意です。

「怠惰」は全力で勝利を目指さない罪として紹介しましたが、「全力でなりふり構わず勝利を目指す」ことはえてして他のバッドマナーにつながることが多々あるからです。

ゲームで遊ぶ以上、勝利を目指すのは当然。
それでもゲーマーにとって何よりの勝利は卓を囲んだ人全員がそのゲームを「心から楽しかった」という体験にすることです。
勝ちにこだわりすぎることで以下のマナー違反をしないよう心に留めましょう。

【過度なアドバイス】
他者も「絶対勝ちたい」と思っているはずだと感じたり、もしくは協力ゲームをしているときに、過度にアドバイスをしてしまう人がいます。ボードゲームは失敗して学ぶことも楽しみの一つ。特に指示とも捉えられるような強いアドバイスは控えた方が賢明です。初心者にアドバイスをする場合、「自分のターン」でどのような考えでその行動を選択したのかを解説してあげると参考にできるのでお勧めです。

【超長考】
長考問題は状況やゲームにもよることが多く、一概に語ることは難しい問題です。ただ、自分がバッドマナーにならないように気を付けるのであれば、「他プレイヤーと比較して相対的に時間がかかりすぎてないか意識する」「勝負所で長考する場合はその旨を宣言する」ことを意識するだけで大分相手の受け取り方は変わります。「怠惰」とのコンボ技で見てなくて長考…みたいなのは最悪なので絶対やめましょう。

【巻き戻し】
囲碁や将棋では一度打った手を巻き戻すいわゆる「ハガシ」は一発負けの厳しい罰則があります。ただ、ボードゲームではそこまで厳しくやることはほとんどなく、多くの場で巻き戻しが見られます。大前提として巻き戻しが許されるためには「ほかのプレイヤーがその行動を受けて行動をしていないこと」と「相手の許可を取ること」が大前提です。…が、自戒も踏まえるのであればこのラインは相当厳しく引いておいたほうがいいです。逆に初心者相手にはここはしっかり寛容にしてあげてゲームを楽しむことを優先させてあげましょう。

【三味線】
「嫌われる」という点では非常に気を付けなければいけないのが、「自分の有利を取るために人の行動に(アドバイスの体で)口を出す」いわゆる三味線行為です。中のいい友達同士ならそれ自体に突っ込みを入れながら楽しめるのですが、そこまでの関係性ではない場合は「うわぁ…」と思われるだけなので注意しましょう。ガチの三味線行為はゲーマーなら本当に分かってしまうので…。

【いかさま】
マナーとか以前の問題なので画像には書きませんでしたが、これは言うまでもなく論外です。そもそもボードゲームは(特に重ゲーほど)資源管理なんかは自分に任せられてるのでやろうとすればいかさましほうだいなのに、それをせずに「1金足りない…泣」みたいのを楽しむマゾい趣味です。例えばれなかったとしても、それで得た勝利には価値はありませんし、もしいかさまを発見したら抱く感情は怒りではなくもはや哀れみです。そっと次から同卓をやめましょう。

まとめ

繰り返しになりますが、ゲームマナーを破ることは将来の自分の遊ぶ人を失うことになる明確な失点行動です。ボードゲームを趣味にするからには目先のゲームの勝利よりもっと大事なものがありますし、こと非ゲーマーとのゲーム会の主催となれば自分が範を示すために完璧なマナーでゲームをすることは非常に重要になります。

また、7つの大罪の保持者はゲームをやっていれば必ず対面することになりますが、その時は怒るのではなく反面教師として「こうはならないぞ」と深く心に刻むことを大切にしましょう。

ひとりひとりが意識することで、悲しい思いをする人が減り、たくさんの人がゲームを心から楽しんでもらえるようになるとうれしいですね。

それでは‼よいボードゲームライフを‼

参考文献

  1. Board Game Arenaの略。世界中の様々なボードゲームを(メーカーの宣伝の思惑もあり)超絶格安で楽しむことができる。リアルタイムでのゲームの他に「ターンベース」と呼ばれる空いているときに自分の手番を行うやり方もあり、この場合は決着まで何日も(下手すりゃ何週間も)かかることがある。私は対面のやり取りが好きなのとはまると猿のようにやり続けそうなのでコロナ終息後はほぼ手を出していない。

  2. この世界には化け物のような知識と所持数を誇っているゲーマーがたくさんいるのでそもそもここでマウントとるのは後発ではほぼ不可能です笑