1-1 日本のゲームは両極端?将棋、麻雀、人生ゲーム

第一章ではほとんど世の中でなじみがない「ボードゲーム」という趣味全般の取り巻く環境と、その魅力の割にいまいち一般社会でメジャーな趣味になり切れていない理由について概論で話してみたいと思います。
まずここでは我らが「日本」におけるボードゲームの現状を見てみましょう。

「運」と「実力」両極端な日本

日本のボードゲーム業界は近年、確実に成長を続けてきています。
日本語化されるボードゲームの数もゲームカフェ[1]の数も年々増え続け
youtubeなどでの配信も増えたことから若年層の流入も増加。
本当にマニアックな趣味だったひと昔前に比べると大分市民権を得てきました。

しかし、市場規模的にも知名度的にもまだまだ一般に浸透したは言えません。
2023年時点のボードゲーム市場は約100億円。
コロナ禍の巣ごもり需要で増加したとは言え、トレーディングカード[2]市場約1,000億円の10分の1。
伝統的ボードゲームである将棋の市場規模500億円の約5分の1です。※引用元

集計方法は厳密には同じではないと思いますが、全世界トップのボードゲーム大国ドイツ[3]でのアナログゲーム市場規模は約700億円。ドイツの人口は日本の4分の3にも満たないため、一人当たりの金額では実に10倍程度の差が生まれています※引用元

なぜイマイチ爆発的な人気になることが出来ないのか?
いくつか理由はあると思いますが、「ボードゲームが簡単すぎるor難しすぎるという強固な思い込み」が挙げられるのではないでしょうか。

私調べでは、「趣味はボードゲームです」という言葉への返答ランキング1位は「それって人生ゲームみたいなやつですか?」です。

多くの日本人が遊んだことがある「人生ゲーム」
これはこれですごいゲームで、日本語版の売上は累計で1,500万個以上。
世界で一番売れているドイツボードゲーム「カタンの開拓者たち」が”世界で”4,000万個の売上であることを考えると驚異的な数値です。

このボードゲームでやることは基本は盤面中央のルーレットを回すのみ。
そのため、大人と子ども誰もが一緒に楽しめることができるのが、ここまで大ヒットとなった理由の一つでしょう。

しかし、裏を返せば人生ゲームは超強烈な「運ゲー」です。
最近のものはゲーム要素を高める方向にシフトしている[4]とはいえ、基本はルーレットの出目次第。
子どもでも勝つことが出来ますが、大人同士でわざわざ集まってやろうという話にはなりません。

逆に、藤井8冠[5]の活躍で改めてブームになっている「将棋」や「囲碁」
これは「完全情報ゲーム」と言われ、運要素が一切ないガチガチの「実力ゲー」です。
繰り返すたびに着実に上手くなるものの、自分より上手には逆立ちしても勝つことはできません。

「運」か「実力」か。
両極端なゲーム以外の選択肢をそもそも知らないせいで、多くの日本人はボードゲーム自体を「こどものおもちゃ」もしくは「賢い人たちが戦う高尚なもの」として捉え、「一般人」である自分が趣味にするということを考え付きもしない状況を知らず知らずのうちに作り上げてきたのではないでしょうか。

「運」と「実力」が融合したユーロゲーム

このブログで「ボードゲーム」と呼んでいるドイツをはじめとする多くのユーロゲームは「運」と「実力」のバランスこそがゲーム自体の魅力になっています。
正確に言うと、ボードゲームの中にも「運ゲー」や「完全実力ゲー」もあるのですが、「運ゲー」から「完全実力ゲー」の間に数万種類のゲームがひしめき合い、グラデーションを構成しています。

ちなみに、日本で運と実力のバランスが取れているゲームで最も有名なのは「麻雀」でしょうか。
このゲームは私も大好きですが、ことボードゲーマー視点で言うと「四人専用、複雑な符計算、雀卓など専用の設備を必要とする取り回しの悪さ」など弱点が目立ちます。
逆に、これだけの弱点を抱えながらなお、熱狂的に愛されてきたのは、やはり日本では数少ない「運」と「実力」のバランスの魅力があるからではないかと私は思うのです。

ボードゲームは「運」と「実力」のバランスもゲーム難易度も、そしてゲームシステム[6]も実に多種多様です。
「やりたいゲームに合う人を探す」やり方では自分のコミュニティの中で遊ぶことは難しいですが、ボードゲームはその多様性から「いる人に合わせたボードゲームを楽しむ」ことができます。
このようにして学友、家族、同僚などの自分のコミュニティの中で絆を深められることこそが、前段でお話しした人生を変える影響があることと非常に密接に結びついてきます。

日本の極端なゲームの印象から「自分とは別世界」と思っていたとしたらそれは大損です。
ボードゲームの世界の懐は限りなく深く、ちゃんと知識さえ持っていればどんなコミュニティの絆も深められます。

そのために必要な知識や注意点はこれから少しずつ共有していきますので、
まずは気軽に読み進めてみてください。

次回はちょっと真面目に幸福論の中の「幸福の4つの因子」からもう少しボードゲームの魅力を掘り下げてみたいと思います。

それでは、よいボードゲームライフを‼

参考文献

  1. ボードゲームがお店に大量に置いてあり自由に遊ぶことができるスペース。時間貸しが大半で”カフェ”要素はおまけであることも多い

  2. ボードゲーマーには昔はカードゲーマーだった人が非常に多い。ボードゲームはレアカード以外は価値なしという事態も札束での殴り合いもないのでこっちのほうがいいって思ってくれる人が多いらしい

  3. ボードゲームをする人間なら全員が憧れる夢の国。有名デザイナーの数は他国を圧倒していて、世界最大のボードゲームイベントである「エッセン・シュピール」もこの国で行われている。謹厳実直で論理思考を好む国民性とボードゲームが合っていると言われている

  4. ただ単にルーレットを回すだけというゲーム性から拡張ボードを追加したり様々なキャラクターとコラボしたり、いろいろな工夫はしている。

  5. (重量級ゲームの代名詞である)アグリコラとかをやってるところをいつか是非見てみたい。鬼のように強いんだろうな…。

  6. よくある資源を集めて得点を競うだけではなく、アクションゲーム、バランスゲーム、連想ゲーム、お絵かきゲームと本当に多種多様 …だからこそ選ぶのが難しい部分もある